春は名のみの風の寒さに咲く梅の花は、凛とした美しさを漂わせます。桜は爛漫の春を誇るかのように咲きます。寒さの中に凛と咲く梅の花は、華やかな花たちと競合しないように一足早く咲くのでしょうか。それとも、一冬に蜜を食べ尽くした蜜蜂を助けるために咲くのでしょうか。山桜は別にして、総じて桜は絢爛であっけらかんと咲き誇ります。
医療刑務所に勤務していたころ、人情家で親分肌と定評のある上司から夜桜見物に誘われました。見物だけでしたらよいのですが、行くと現場の一等地にゴザが敷かれ新任刑務官が陣取っていました。座るとゴザを通して冷えた地面を感じ、腰の辺まで冷気に浸かりました。
いくら飲んでも、顔と頭しか暖まりませんでした。