ワンダフル・コペンハーゲン
ハンス・クリスチャン・アンデルセン

 

 赤はワイン・レッド、緑はモス・グリーン、そして白はオフ・ホワイトというふうに、青白く澄み渡った空気と重厚で質感に富んだその色調は北ヨーロッパの風景にみられる特徴です。北極圏に近い緯度が独特の明度と色調を生むのだろうと思います。「ワンダフル・コペンハーゲン」は劇中で美しい北欧とそこに住む人たちの明るい笑顔を讃え上げる曲ですが、これこそと納得させてくれる独特の色調と雰囲気で舞台の上の風景や人々が光り輝くのと相まって、ミュージカル・アンデルセンを格調高く特徴づけています。ハンス・アンデルセンが生まれ育ったオーデンセは、清らかな水と豊かな緑に心が和み懐かしさを感じるような美しい町です。

 しかし、貧しい靴職人の父は人嫌いで、酒びたりの母は町中の鼻摘みでした。そんな家に生まれたアンデルセンは、幼い頃から近所の子どもに馬鹿にされ苛められて、孤独な少年として育ちました。遊び相手がいないので、近くの野原や林でリスや小鳥と遊ぶしかなかったのです。志を抱いてコペンハーゲンに出て、王立劇場に入って歌手の修行に励みます。やがて、詩人として身を立てることを決意して詩歌、演劇、小説そして旅行記と幅広い著作活動を繰り広げたのです。さらに、童話作家として世界中に 知られるまでになりましたが、誰にも相手にされず淋しかった少年時代の思いが作品の全てに込められています。

 そして、それらの作品のどれもがどこか温かいのは、豊かな自然に恵まれた美しい町と風土に抱かれていたためでしょう。アンデルセンの誰からも愛してもらえなかった飢餓感は、つねに誰かを愛していたいという気持ちに変化し、つねに誰かを愛し、報われない恋愛をし、愛してはいけない人を愛してしまう人生でした。しかし、愛する気持ちは人を強くし、人生を豊かにして、創造力の汲めどもつきない源泉となります。世界中の誰からも愛される多大な名作は、愛する気持ちが源泉となって生み出されたものと思います。ミュージカル・アンデルセンは数々の名作が生みだされるエピソードを次から次へと綴って見せてくれる楽しい作品です。

 

 

 

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