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昭南島はシンガポールのかつての日本名です。日本空軍勢力がプリンス・オブ・ウエールズら英国艦隊を撃沈し、陸軍銀輪(自転車のこと)部隊がマレー半島を破竹の快進撃をして、東南アジア最大の戦略拠点英領シンガポールを陥落させて「昭南島」と名付けたのです。昭和の御代に得た南の島という、万歳三唱が聞えて来そうなネーミングです。
このように微妙な過去を持つシンガポールで「アジア舞台芸術祭」が開催され、ミュージカル李香蘭が上演されました。ご存じのように中国公演でも大成功を収めた李香蘭ですが、中国では民族主義的な愛国心に強く感動を与えたようでした。そこで、おなじ中国人であるシンガポールの華人たちの反応は如何かと興味がありました。「松花江上」を合唱する遊撃隊の愛蓮たちにばかりでなく、満州国の五族協和を謳う群舞などに対しても。純粋にミュージカルの演技的な観点から舞台の良否を判断しようとする、成熟した芸術鑑賞の姿勢を感じ取ることができました。
「日本政府が歴史の事実を歪曲し、自ら犯した過ちを謝罪する気がまったく無いと思っていたが、ミュージカル李香蘭は日本人のもつ正直で善良な側面を見せてくれた」と好評でした。
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