かつて車椅子で生活する人を、街中で見かけることは殆どありませんでした。しかしこのごろは車椅子のために専用エレベーターやトイレなどの環境整備がすすめられ、一見すると車椅子生活者が社会進出するための条件は整っているように思えます。そして"普通の生活"を求める車椅子生活者は社会進出を目標の一つとして考えていますから、そのための環境整備がなされているのであれば、どこへ行っても車椅子生活者を見かけることは珍しくないはずです。 ところが車椅子生活者の視点で眺めてみますと、外出目的で家を一歩ならぬ一走りしたところで外出の意欲を消沈させられてしまいます。路肩の傾斜、歩道の段差、電柱外路灯、ごみ箱、そしてところかまわず放置された自転車の群れに往く手を阻まれてしまいます。社会へ進出するための環境整備が"点"であっても、今後整備され続けて行くのであれば、それが一本の"線"になってくれるまで待ちます。 "点"が"線"となって生活環境が整った頃には、住環境の整備も完了しているものと思います。ドアでなくて引き戸、凸凹のない床、そして配慮された風呂、トイレ、調理台など全てが車椅子生活者に快適な生活を約束してくれるでしょう。ところが、その不自由無い生活は、24時間可能というわけには行きません。ボランティアであっても家族であっても、他の人から協力が得られる時間は生活の中の"点"であって、切れ目ない"線"を望むことは出来ません。 そこを期待できるのは人間以外の犬、盲導犬の例にならって「介助犬」ということになります。うっかり落とした物を拾うのに電子技術を駆使した「介助ロボット」を開発するよりは、介助犬を育成した方が比較にならないほど簡単です。目の不自由な人が盲導犬をパートナーにして自由を得たように、車椅子生活者も介助犬をパートナーにして自由を得て欲しいと思います。
中嶋柏樹(なかしまはくじゅ)52才 東京都府中市 心理学コンサルタント 多摩介助福祉犬協会運営委員長 東京都精神保健福祉専門委員 大学非常勤講師 精神障害者社会復帰事業ボランティア・グループ代表
【熱烈歓迎太郎華家族】 太郎と華子は介助福祉犬/柏樹と早苗は心理学コンサルタント&シアターアドバイザー/ラブ好きで介助福祉犬・ラブラドールとの出会い・拾って欲しい人と拾いたい犬・女王陛下のラブラドールクラブ/演劇を鑑賞する心・日本の心とオリジナルミュージカル・世界の定番の日本のミュージカル/ 介助福祉犬の小文が産経新聞ホーム・ページの「正論」に掲載されました。4月30日まで、掲載されている予定です。URLは www.sankei.co.jp/hanbai/m_plaza/index.html です。
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