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南半球の国、オーストラリアやニュージーランドに住む人たちにとって「ダウン・アンダー」という言葉は、ずいぶんと気になるもののようです。北半球に住む私たちは説明されても理解しにくいところですが、先進国と途上国ということだけではなく、かつては「北」が父祖の地という気持ち、「都落ち気分」それに「負けん気」と、これらが絡みあった「ひけめ」に近いものなのでしょうか。
北極が上にあり南極が下にある私たちの地図でみるとオーストラリアは南極のすぐ上にあり、ニュージーランドはそのすぐ右にあることになりますが。オセアニアには、南極が上で北極が下の地図があり、オーストラリアまたはニュージーランドが真っ赤に塗ってあって、世界の中心は私たちが住んでいるこの国で、そのほかの国は「ダウン・アンダー」と書かれてあります。
勿論ほとんどジョークでしょうが、「北」が上にあって当然と、わざわざ考えるまでもなく考えてしまう私たちにとって、当然考えて欲しくない人たちがいることを知ることも大事であると知らされました。「北」と比較して、オセアニアでもっとも「南」らしい国はニュージーランドであるように思いますが、私たちの住む日本は「南」の代表ニュージーランドから見ると「北」の代表のようです。
ニュージーランドは「農業国」、日本は「工業国」という大きな違いがまずありますが、日本と比べて対照的と思えるところを挙げてみますと、まずは乱開発と汚染などとは全く無関係の「豊かな自然」でしょう。そして、衣食住すべて生活必需品はべらぼうに安く、贅沢品はべらぼうに高価なのです。家は200坪の土地に一戸建てで平均1千万(日本人は2〜3億の豪邸に住みたがり好感は持たれていない)食肉は一桁安く野菜はハウス栽培など無くすべて旬、時季の露地ものです。
衣料品はポリエステルやアクリルでデザインはシンプル、とても日本人には着る気になれませんが極めて安価。ところが、セーターなどの純毛製品や毛皮、皮革製品はびっくりするほど高価でデザインはまったく流行などとは無縁のシンプルなもの。さらには、共産国ではないのに、医療費、教育費が無料、収入は引退後も現役時とほとんど同額の年金を貰って、自適な生活が送れているとのことです。
その代わりに所得税が25%消費税が12%で、かなり重税感があるとのことです。工業製品は殆ど輸入で、自動車などは贅沢品扱いで、カローラ・サニークラスは日本での新車価格+100万円ぐらいだそうです。ボロボロの中古車が日本の新車並みの値段で売られており、面白いことにヨットは日本とは逆で50万円ぐらいから買えるとのことで、軽のワンボックスがトレーラーでクルーザーを牽引している光景がよく見られます。
平均的なニュージーランドの人達をスケッチしてみますと、上等な衣料を数少なく持ち、いつまでも大切に着ているような、家でも自動車でも総て自分で修理し決して無駄をしない生活がそこにあります。私たち日本人の生活にも戦後の高度成長期にかかるころまでは、分をわきまえ華美にながれず無駄を慎む心があったようです。日本人は豊かになったといわれ、誰もが小金をもち、物に取り囲まれております。
高価な有名ブランド品に憧れております。しかし、ダウン・アンダーへ視点を移し変えてみますと「豊かさとはなにか」を考えさせられてしまいます。 ダウン・アンダーから異なったものの見方を教えて貰えることは有難いことです。
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