育児を「しない」父親たち

 

 いまどきの子育て世代には、父親も育児をするものという意識がかなり浸透しているようです。にも拘らず日本の男性が、育児と家事をする時間は先進諸国の中で最低水準です。週末、父親たちがベビーカーを押したり、公園で子どもと遊んだりする姿をよく見かけます。数々のアンケートでも仕事よりも家族を優先したい、父親も育児に関わるべきと答える父親が多くなっています。しかし不思議なことに、父親たちの育児と家事の参加時間は、この20年ではあまり増えていません。6歳未満の子どもを持つ親が育児と家事に費やす時間は、母親が共働きでは1日約6時間程度であり、専業主婦では約9時間程度ですが、父親はわずか1時間程度です。

共働き世帯の場合でも、7〜8割の父親が日常的に育児や家事を殆どしていないという実態が報告されています。育児や家事をしているのは、6歳未満の子どもを持つ父親の約3割程度のようです。日本の父親が育児と家事をしないのは、長時間労働のためというのが通説になっています。ところが、育児を遊びと世話に分けて分析しますと、育児をする父親たちは子どもと遊びはするけれども、子どもの食事や身の回りの世話はしないということが分かりました。父親たちが育児という言葉で語るとき、それは世話ではなく子どもと遊ぶことを指すようです。

父親の労働時間が比較的短い場合、子どもと遊ぶ回数は増えても世話をする回数は増えないことも報告されています。父親たちは時間的に余裕があっても、必ずしも食事の準備やオムツ替えなどを多くする訳では無いのです。通常、父親と母親で収入や学歴の高い方が、育児と家事に関わる交渉で強い立場が取れています。多くの場合父親の収入の方が高いので、母親の育児と家事の負担が増えます。ところが、母親に十分な収入がありますと、父親の家事分担が増え易いのです。そして、収入が同レベルでしたならば、父親の分担割合も増え易いということです。

 日本の企業の多くは中核的な社員を無限定に働かせますから、男性は早く家に帰れず育児と家事に関わり難いことも事実でしょう。そのために、育児と家事の負担は女性に重くのしかかります。今の働き方とそれを支える価値観のままでは、子供を産んで育てることが難しい状況が続くことは間違い無いでしょう。

 

 

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