北朝鮮崩壊後の国連暫定行政機構

 

 北朝鮮の金政権は、核弾頭搭載弾道ミサイルの開発を急いでいます。アメリカ本土をも射程圏とする核を搭載した弾道ミサイルを開発して、無条件で安定した政権の存続を図ろうとしています。しかしその反応は意図とは正反対であり、アメリカは北朝鮮の弾道ミサイルに核弾頭が搭載可能となった時点で、トランプ大統領はアジアと世界の平和と安定を守るためとし、自国防衛のために金正恩ら政権首脳を排除する米軍特殊部隊主導の「斬首作戦」を決行するでしょう。 今までにもアメリカ軍が北朝鮮に「先制攻撃」を仕掛ける機運はありましたが、韓国が甚大な被害を受ける可能性があり中国や日本に被災民が押し寄せる懸念があるとのことで見送られていました。

 朝鮮半島の統一は韓民族の悲願ではあるでしょうが、勇ましく軍事力で統一を果たそうとする北朝鮮に対して、韓国は統一後の膨大な経済的負担に本音では二の足を踏むのでしょう。東西統一を果たしたドイツでは、東ドイツが同一歩調を取るために西ドイツが巨額の資金を負担したようです。韓国は北朝鮮を背負い込む経済力が無いので、国民の合意を得るのは難しいでしょう。

 米中首脳会談に於いてトランプ大統領が、北朝鮮に先制攻撃を辞さない旨を習近平主席に伝えて了承が得られたようです。習近平主席は南シナ海の黙認を条件にしたのかも知れませんが、金正恩ら北朝鮮首脳を排除した後に国連安保理決議に基づいて平和維持の多国籍軍が駐留し、新たな政権が樹立されるまで「北朝鮮暫定行政機構」を設置する工程表を示すならば容認するでしょう。

 アメリカ軍が北朝鮮に「先制攻撃」を仕掛け一方的に勝利したとして、半世紀以上も休戦していた「朝鮮戦争」の再開でありその勝利であると位置づけられたならば、国連軍とは名ばかりのアメリカ軍が北朝鮮に進駐し数年間は軍政が敷かれることになるでしょう。アメリカ軍に常駐されたままに国境を接する、中国とロシアにとっては国防上の懸念を放置したままには出来ません。

 トランプ大統領は先制攻撃の「レッドライン」を明確にしていませんが、長距離弾道ミサイルの発射か核実験の実施がレッドラインであろうと誰もが考えています。その為にか北朝鮮は勇ましい発言をしていても、短距離弾道ミサイルを発射する程度でお茶を濁し国内外の緊張を維持しているようです。 朝鮮半島とその周辺に集結させ展開している米軍を、トランプ大統領はこの膠着状態を長引かせないよう、恒例の米韓合同軍事演習を実施した後に監視機能を残して撤収するのではないかと思われます。

 いまの情勢は、戦国時代の「城攻め」に似ています。北朝鮮の金正恩ら最高指導者は防御を固めた城に立て籠る一方、米軍は圧倒的な軍事力で城を包囲しつつあります。「兵糧攻め」というように、城に立てこもった側は武器弾薬と食料の補給が決定的な弱点になります。 「篭城」は弾と糧食が無ければ戦えませんが、いま北朝鮮にとって「弾と糧食」に直結するのは原油です。北朝鮮は原油の9割を中国からの輸入に依存しているのですから、トランプ大統領は、先の米中首脳会談で習近平国家主席に対して、北朝鮮への原油供給を停止するよう要求したのでしょう。

 もし中国がその要求に応じなければ、北朝鮮と取引がある中国の銀行や企業に対して米国が取引停止などの制裁を課すでしょう。銀行の外国為替業務が停止されれば中国にとって打撃になりますので、中国は要求に応じることになり、北朝鮮は戦争どころでは無くなってしまいます。戦おうにも戦闘機は飛ばせず、戦車も動かせなくなります。 もちろん経済もマヒするでしょうし、そもそも戦争を出来る状況には無いのです。原油供給を停止する影響は、先に中国が決めた北朝鮮からの石炭輸入停止の比ではありません。北朝鮮の体制そのものを揺るがすことになるでしょう。

 中国からの原油の供給が停止されその影響が出始めますと、国民の不満は爆発し政府軍と「反政府軍」に二分化され内乱状態に陥るでしょう。米軍は弾道ミサイル基地と核実験施設をピンポイントに空爆してその機能を停止させれば目的を果たせます。中国は国境防衛を固め避難民を受け入れるでしょうし、韓国も国境防衛を固め避難民を受け入れるでしょうでしょうが表面上は傍観ということになるでしょう。

 アメリカは核弾頭搭載大陸間弾道ミサイルの脅威を取り除くために、いま迄のような繰り返しにならないよう、米韓両軍の特殊作戦部隊を北朝鮮領内に潜入させ「反政府軍」を支援して「斬首作戦」を実施するでしょう。

 中国は北朝鮮が韓国に併合され、韓国駐留アメリカ軍と国境を挟んで対峙するようにすることになるのは避けたいでしょう。そして今まで通りに中国製品の市場であって欲しいし、石炭や鉱物資源を輸入できる状況にしておきたいでしょう。ロシアも、韓国駐留アメリカ軍と国境を挟んで対峙するようにすることになるのは避けたいでしょうし、極東シベリアの開発に必要な安価な労働力は確保していたいでしょう。

  アメリカと韓国が支援した「反政府軍」に政権を移譲するのでは無く、「反政府軍」の武装を解除してその指導者を中心とした「臨時政府設立委員会」を組織させます。休眠状態にあった「六カ国協議」を復活させ、アメリカ、韓国、中国、ロシア、日本の各代表と設立準備委員会メンバーとで構成します。そして拘束し留置した金正恩ら最高指導者と武装を解除した朝鮮人民軍3軍と戦略ロケット軍の処遇を検討します。

 想定される一つはルーマニア革命におけるチャウシェスク方式です。トップ夫妻だけが処刑されて、その他の政権中枢は統治を継続するために殆ど罪を問われませんでした。この措置で収まったのは、ルーマニアの場合は蓄財や国民への弾圧という犯罪が単純であったからです。 専制君主のような統治を断罪すれば良かったのですが、北朝鮮の場合は専制指導者が3代にもわたって、違法な核開発、他国からの人材の拉致、自国民への虐待、対外的なテロ行為、覚せい剤等の密売、大規模な偽札製造、人道支援物資の横流し、国際法違反の闇市場への武器横流しといった、犯罪行為を多角的に行ってきたわけですから、トップだけの責任にする訳には行かないのでしょう。

 戦争犯罪や人道に対する犯罪などを免罪するようでは暗黒史の真相解明はできませんし、建設される新国家の中でのモラルと秩序の形成も上手く行かないことになります。ということで、現在の統治組織の相当な部分については個人的な犯罪を問うべきであり、本気で断罪するのであれば旧体制に対する大規模な戦犯法廷の設置が必要となります。

仮にそこまでやるとして、条件としては国連やEUのように「死刑は適用しない」つまり命は取らないということにするのは適切と思いますが、それにしても、相当に大規模な犯罪捜査になりますし、その証拠保全などの活動をしっかり行うには、日米韓と中国の密接な連携は欠かせません。

 しかし、本当に統治者の責任を問うのであれば、国民には自由と人権をしっかり保証して進めるのが道理であり、そうなると、そうで無い中国は協力は出来ないということになります。また、唐突に北朝鮮国民に自由を保証してしまいますと、38度線が崩壊して「なし崩しの統一」が進んでしまい、それを韓国が支えきれない事態が起こってしまうことになります。

 「六カ国協議」の場において5カ国の指導を受けて「臨時政府設立委員会」は、中国と韓国の製造委託先として徐々に経済を拡大し民生を向上させる役割も果たさなければなりません。中国と韓国が力を合わせて北朝鮮を緩やかに「改革開放」させると云うことで、大きく国境を接する両国にとっても安定した関係が持てる新しい国を築くことが出来ます。アメリカをはじめとする西側諸国は、非人道的で犯罪的な為政者に抑圧されて来た北朝鮮に対しては、自由を与えて国民を開放してあげたいという強いイデオロギー的な使命感を持ってしまうでしょう。また朝鮮民族の「統一悲願」が次の段階での案件であることを納得して貰わなければなりません。

 国連安保理決議に基づいて平和維持の多国籍軍が駐留し、新たな政権が樹立されるまで「暫定行政機構」を設置した例は「東ティモール」が知られています。 東ティモールはポルトガル領ティモールとしてポルトガルの植民地でした。インドネシアの侵攻によりインドネシアの実効支配下に入りましたが、ティモールの住民はこれに反発しました。武力闘争も含む独立運動を行い、インドネシアはこれを強圧的に押さえつけていました。インドネシアの民主化運動により新しい大統領に替わりますと東ティモール問題は協調姿勢に転じ、インドネシアとポルトガルの間で東ティモール自治拡大に関する直接住民投票実施することで合意しました。

 これを受けた国際連合は「国際連合東ティモール・ミッション(UNAMET)」を設立し、東ティモールで住民投票を実施することになりました。ミッションは文民スタッフと文民警察官そして軍事連絡要員と国連ボランティアその他のローカルスタッフで構成しましたが、治安維持に関してはインドネシア政府が行なうこととなっていました。ミッションは有権者登録や投票所設営と開票所の運営を行なうのです。

 住民投票が行なわれる日時が決定されましたが、インドネシア軍と警察の治安維持活動は消極的であり不活発でした。インドネシア統合派の民兵などにより治安は悪化して行きましたが、国連平和維持軍の投入はインドネシア政府の反発もあって実施されませんでした。住民投票は概ね成功裏に実施され投票率はほぼ100%に達し、自治拡大票は20%強であり自治拡大拒否票は80%弱という結果になりました。

 自治拡大を拒否し独立選択の結果が出たことにより、インドネシア統合派の民兵の活動が拡大し東ティモールの治安は大きく悪化しました。UNAMET要員はオーストラリア・ダーウィンまで避難し、オーストラリア軍を中心とする平和維持の多国籍軍(東ティモール国際軍 INTERFET)の投入を認める安保理決議が採択されました。

 東ティモール国際軍 (INTERFET)現地展開により治安は回復され、ミッションも東ティモールに帰還し安保理決議により、東ティモール独立に向けての「国際連合東ティモール暫定行政機構(UNTAET)」が設立されました。暫定行政機構(UNTAET)」の任務は治安維持や人道支援の実施、そして公共サービスおよび政府機構の設立支援などです。 

 UNTAETは東ティモールの暫定的な統治権を有し、東ティモール独立派幹部とともに政府機構設立作業にあたりました。東ティモールは独立を宣言、UNTAETは任務を終了し、その後の支援は国際連合東ティモール支援団(UNMISET)に引き継がれました。

 インドネシアの実効支配下にあった東ティモールは、国際連合東ティモール・ミッション(UNAMET)が行なった住民投票により独立を選択し、UNTAETの支援の下に独立準備作業を行ないました。東ティモールの独立国際連合安全保障理事会決議により、UNTAETの後継として独立後の支援を行なう国際連合東ティモール支援団(UNMISET)の設立が採択されました。UNMISETは東ティモール政府への全般的な協力を行い東ティモール警察を支援し、東ティモール国内および周辺地域の安全を確保することを任務としていました。

 北朝鮮が新たな国に生まれ変わるために、六カ国協議の5カ国がそれを支援しますが、しばらくは中国に倣って社会主義のまま「改革開放」で国力を蓄えるのが適切でしょう。 休戦状態が半世紀以上も続いた「朝鮮戦争」が終戦となり、アメリカ軍が韓国に駐留する理由が無くなりました。国連安保理決議に基づいた平和維持の多国籍軍(PKF)が駐留し、新たな政権が樹立されるまで駐留することになるでしょう。 北朝鮮が新たな国に生まれ変わっても、国名は朝鮮民主主義人民共和国のままに多分なるでしょう。中国に倣って「改革開放」を進め、いま迄以上に良好な関係となりロシアとも良好な関係を維持することが可能でしょう。

 その流れから韓国は中国から干渉を受け、台湾に似た位置づけに置かれることになるでしょう。朝鮮半島の統一の為にと中国寄りの立場を取る人たちと、民主主義と人権を守ろうとする人たちで二分されるようになるでしょう。 韓国の将来は韓国の人たちが決めることでしょうが、韓国は台湾のように日本と良好な関係を発展させ、大国から脅かされないよう3つの国が力を合わせ平和で安全な国にして行けたらよいと思います。

 

 

 

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