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真珠の首飾りといえば中国の海洋シルクロード戦略を思い浮かべるかも知れませんが、10年前に青年劇場による真珠の首飾りが全国各地で上演されました。そして戦後70周年を記念してか、また上演されるようです。
第2次大戦終結間もない東京で日本国憲法草案を作成したGHQ民政局員たちを描いています。大戦中に戦死したグレン・ミラーの名曲真珠の首飾りにのせて日本国新憲法誕生の舞台裏を描いているのです。日比谷のGHQ連合軍総指令部の一室に民政局員たちが秘密裏に集められたのは、日本政府の憲法改正案をスクープ記事で知った連合軍最高司令官マッカーサー元帥がその保守的な内容に失望し、GHQで草案を作成すべしと民政局に命じたからです。
25名の民政局員たちは、22才のベアテ・シロタを含め20代から50代まで、いずれも法律家、学者、"日本通"など多士済々のメンバ−たちでした。日本に暮らし日本を熟知したベアテ・シロタが、世界主要国の憲法を調べ上げ人権を尊重した最高の憲法草案を作り上げたのです。社会的弱者の権利を守る憲法としては、アメリカの憲法よりも遥かに理想的だったのです。
真珠の美しい光沢は、アコヤ貝の中で苦悶しつつ絞り出した粘液が、だんだん重なって生まれるものです。GHO民政局のメンバーたちにとって、他国の憲法をわずか一週間で作成するのには相当な苦悶があったでしょう。その苦闘ぶりを再現した作品ですが、そうして生まれた日本国憲法は103粒の真珠のように光り輝いていると思います。
平和を希求する世界中の人たちからも支持されている日本国憲法は、アメリカから押し付けられたと言えば確かに押し付けられたものです。しかし、もし押し付けられなかったら新憲法とは名のみで、内容は自由民権を封じる明治憲法となんら変わらないものとなっていたでしょう。アメリカは日本が戦争をしないよう平和憲法を押し付けましたが、朝鮮戦争が勃発したので警察予備隊を創らせ、特別掃海隊は56名の戦死者を出しています。そしてまた、南シナ海のパトロールと海兵隊の創設を示唆しています。
国際情勢と日本の置かれた立場から、集団的自衛権が行使できる普通の国にしたい気持ちは分かります。しかし、先の戦争の総括もせず、多くの犠牲を払って得た教訓を生かしていません。集団的自衛権を行使できるようにしたら、同じ轍を踏むことになります。平和憲法があっても海外派遣まではやるが、海外派兵はできないと言い張るのが賢明だと思います。都度、特措法で乗り切る方がやり過ぎを抑えられて安全です。
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