女性総合職

 

 このところ「女性総合職」の相次ぐ退職が話題になっています。しかし、TVなどマスコミの取り上げ方は画一的で、視聴者が喜びそうな部分のみを取り上げているようです。番組の骨子は退職した女性にインタビューして、せっかく就いた総合職をなぜ辞めたかを語らせます。そして“有識者”である男性コメンテイターは、男性の仕事への意気込みと比べ彼女らのこの数年間の顛末がいかに甘く思慮が浅かったかを指摘します。同席の女性キャスターは彼女らに共感し同情はしても反論はせず、結果的には男性コメンタイターの意見に追従してしまっています。然るべき女性コメンタイターが登場していれば、番組内容を掘り下げることも可能でしょう。

 しかし、ほとんどの番組は「女性総合職」だった彼女らの言動を弁護するつもりはなく暗に制裁の様ですらあります。「女性総合職」というものを世間の人たちはどのように見ているかといえば、おおよそ次のように思われます。「女性総合職」をおく会社は大きな企業ですから、有名な大学を優秀な成績で卒業したエリート女性がその職に就いていると思い、反面では、そもそも女性は生真面目で授業はサボらずこつこつと勉強するから、満遍なくよい成績を取って就職試験や公務員試験などに強いけれど其れだけでしかない。男性はこつこつと勉強するのが苦手なので優秀な成績はとれないけれど、社会に出たら有能な人材として活躍し重要な役割も果たしている。

 にもかかわらず試験に強い女性が腰掛けでしかないのに応募して、社会に大いに貢献するであろう男性の道を狭めてしまっている。男女雇用機会均等法はあってもいいし「女性総合職」もあってよいが、男性と肩を並べて仕事をしようとするならば、それなりの覚悟をもってくれなければ困る。いい加減な気持ちでいて当てにできないのは迷惑以上のものである。といいたいようです。また会社の経営陣ばかりでなく同じ職場の男性社員や一般職の女性社員からも、「女性総合職」として男性と同じに扱って欲しいなら、すべて男性と同じにしてもらいたい。都合の悪いことは女性だからといって免れようと思わないで欲しい。

 「女性総合職」になるならば、結婚退職や出産休暇などは極力考えないようにして欲しいし、単身赴任なども敬遠しないようにと求めたいのが本音のようです。これは明らかに感情レベルのものであって、羨望や妬みを感じずにはいられません。たしかに有能な男性群と無能な男性群が存在するところに「女性総合職」が加わって、無能な男性群と入れ代わることになるならば、無能な男性たちにとって脅威であり、いかなる手段に訴えても立場と既得権を守りたい気持ちは分かります。しかし実際のところは競合する世代よりも、高年齢世代の方に拒否感が強いようです。意識の上では「女のくせに」ところでしょうが、自分の娘と同じくらいの世代である若い女性たちとどう関わってよいか判らないのが本心でしょう。

 日本の企業が今までのやり方で立ち行かないことが判っているからこそ「リストラ」などと呼ばれているのでしょう。終身雇用制が崩れることは間違いなく、女性と外国人を起用しなくてはならないことも分かっています。しかし男性社会の“しきたり”が障害になっていることも確かです。ところがマスコミや世間から興味本位に扱われている「女性総合職」の退職は決して無駄にはならず、二○三高地を人海戦術で陥したように着実に男社会の“しきたり”を切り崩して大きな風穴を開けようとしています。 

 

 

 

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