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堪えがたい痛みに堪えた後の日本経済に、あのバブル時代のような繁栄は望めないでしょう。気は残っても間尺に合った本来の経済に到達するだろうと思うからです。経済を活気づけるには、時流に乗り遅れて倒産する企業を遥かに上回る新たな企業がたち上がらなければならないのです。日本中のフリーターがベンチャーに鞍替えしたほどの観がありますので、そのエネルギーが無駄にならないよう行政は適正に育成しなければならないでしょう。
とはいえリストラされた大量の余剰労働力を速やかに吸収することは出来ませんから、しばらくの間はワーク・シェアリング(仕事の分かち合い)で乗り切ることになるのでしょう。ワーク・シェアリングを通じて経済と社会の活性化を成し遂げたオランダは、同一労働・同一賃金を原則にして雇用形態による差別的扱いを排除しました。ところが、どうやら日本はそれを原則とする方式はとらず、リストラされた" 負け組 "に低賃金を強いるのではないかと懸念されます。
日本のワーク・シェアリングは雇用が拡大するまでの「仕方なしの分かち合い」としか認識が無いようですから、オランダで実証されていても経済と社会に活力を与えることには気づこうとはしないでしょう。フルタイムとパートタイムという雇用形態に差別的な扱いをしない配慮があれば、安心して自分自身の状況や考えに合わせて働き方を選ぶことが出来ます。 仕事と収入を半分にして、新たな事業を起こす準備をする、育児をし家族との生活を大切にする、趣味を生かして地域の活動に参加するなど、様々な豊かさを手に入れられるのです。
特筆すべき提案として、夫婦に同等の「ペイドワーク(有償労働)権」と「受益権」を保証することです。夫がフルタイムで働きたい時には妻の権利を借りなければならず、得た報酬の半分は受益権に基づいて妻の口座に振り込まれる仕組みです。ということは、もちろん妻が夫の権利を借りることもあり得ます。さらに、ボランタリーな互助労働を「地域マネー」で評価し支え合うことで、アンペイド ワーク(無報酬な仕事)と看做された家事や手伝いをペイドワークにできます。地域マネーの流通が浸透しますと、在宅のままで収入先を増せますので、やがて「主婦業」は死語となるでしょう。
このことから、女性や特定の人たちだけに押しつけられてきたアンペイドワークの分かち合いも進みます。ワーク・シェアリングは経済の側面ばかりで注目されていますが、家庭と地 域へ参加が促進され社会の活性化をはかる効果も見逃してはいけないでしょう。
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