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2巻4号(通巻13号)平成4年4月29日

  

 八重ザクラの花が咲いたら、完璧な春です。寒さの心配はまったくありません。一冬室内に置いた観葉植物や花木の鉢は、露天に出してたっぷりと陽光に当てれば、見る見るうちに鮮やかな緑をとりもどします。そして日ごとに強さを増した陽光は1ヶ月もたちますと初夏の日差しと変わります。鮮やかな緑の葉が日焼けして、黄土色に変色してしまいます。タロパパとハナママは一冬新居のベランダで充分日光浴を楽しんでいたようですが、何といっても冬の弱い日差しですから、どうしても日光不足になってしまいます。

 真っ黒い鼻の頭が色落ちして「赤鼻」になってしまいました。一冬室内に置いた観葉植物が透き通るような白緑色に変わってしまうのと同じです。赤鼻ではかっこ悪いとでも思っているのでしょうか、日差しの下で昼寝をしています。さわると毛は熱く鼻は梅干しのように干からびています。心配になりますが、おかげで真っ黒を取り戻しました。これからは朝日は構いませんが日中と夕日はスダレなどでさえぎり室温の上昇にも気をつけてあげませんと毛皮を脱げない彼らは気の毒ですし、熱射病の心配すらあります。

 ハク爺とサナ婆は中国へ行って来ました。あの倉敷や出雲大社のある中国地方ではありません。中華人民共和国です。ハク爺は北京にある中医研究院の高(ガウ)先生に会いに行く用事があったし、サナ婆はミュージカル李香蘭の長春公演をリポートする仕事があったのです。その長春公演の日程にあわせて上海、長春、北京とまわって来ました。真夏のような上海から真冬のような長春へ飛び、その温度差と季節差には驚かされました。長春はかつての満州国の首都・新京で皇帝溥儀の宮殿や関東軍司令部、満映撮影所など主な建物がそのままに残っています。

 市内路面電車が当時のままに動いているのには驚かされました。東北師範大学の日本語学科には日本人教師が15人もいて、日本へ留学を希望する学生が全国から集められて勉強しているとのことです。そのためか日本語熱は高く私たちが泊まっていた長白山賓館は外国人専用のホテルだったので、ホテル前の広場には日本人と話をしたい学生や若い労働者が集まっていて、私たちにも話しかけてきて市内観光のガイドをしてくれて師範付属中学高校部補修校の校長先生に引き合わせてくれました。出来ることは頼まれないことでもやるといった熱烈歓迎ぶりには驚きました。

 


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